千葉県立保健医療大学紀要
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平成30年度学長裁量研究抄録
本学学生のための喫食を伴う食育プログラムの実施と評価
─ ほい大ごはんカフェの地域への発展と他学科連携の試み ─
渡邊 智子河野 公子田村 友峰子梶谷 節子麻生 智子峰村 貴央
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2020 年 11 巻 1 号 p. 1_84

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抄録

(緒言)

 本学の健康診断時に実施している食習慣調査結果をみると,栄養学科では野菜摂取量が多く,歯科衛生学科ではジュースの摂取量が少ないなど学科による食習慣の相違がある.また,学年別の食習慣では,2年および3年次の食習慣の乱れがあることが分かった.

 そこで,平成28年度から,本学では喫食を伴う食育プログラム「ほい大ごはんカフェ(以下,ほい大カフェ):大学生による大学生のためのランチ提供を伴う食育プログラム)」を実施している.提供する大学生は,『ちば食育応援隊(千葉県民の健康を食の面から応援する目的で活動をしている栄養学科の学生が中心の食育ボランティアサークル)』であり,教員が支援している.対象者は,主に本学の男子学生や一人暮らしの学生である.プログラムの内容は,簡単でおいしく健康づくりに役立つ食事の提供と,リーフレットによる食育活動を実施するものである.なお,平成30年度では歯科衛生に関するリーフレットも加え食育活動を行った.

 本研究は,ほい大カフェのPDCAサイクルにつなげる基礎資料や本学学生の食環境の現状評価,千葉県民の健康づくりにつながる可能性を検討することなどを目的に,提供する学生および参加者へのアンケート調査を実施してきた.平成30年度の結果を報告する.

(研究方法)

 対象者は,ほい大カフェでアンケートに回答した喫食学生計89名(第1回:36名,第2回:29名,第3回:24名)とした.

 まず,ほい大カフェの開催通知は,幕張キャンパスの掲示板及び本学SNSに掲示,掲載したポスターで行った.アンケートは,喫食した学生本人の意思で自由に参加有無を決定できるようにするため,アンケート用紙を提出した時点で,同意が得られたと判断した.また,アンケート実施の強制力が働かないように,喫食者募集のポスターに,アンケート協力のお願いを明記して実施した.アンケートの主な項目は,学科,学年,性別,居住形態,ほい大カフェの満足度,自炊の頻度等とした.

(結果及び考察)

 学科別割合は,「看護学科」66%,「栄養学科」1%,「歯科衛生学科」8%,「理学療法学専攻」16%,「作業療法学専攻」8%ありで,看護学科の割合が高かった.学年別割合は,「1年生」63%,「2年生」31%,「3年生」4%,「4年生」3%であった.栄養学科の喫食者が少なかったことは,本学の食育のターゲットである栄養学科以外の学生を優先しているためであり,1年生の割合が高くなった背景は,ほい大カフェの開催日時を,男子の学生の割合が多く食育を推進したいリハビリテーション学科(主に仁戸名校舎で就学)の1年生が幕張校舎で受講する日に設定したためである.

 ほい大カフェの満足度の回答割合は,「とても満足」67%,「満足」30%,「普通」3%で,ほとんどの学生が満足したと回答した.ほい大カフェで配布したリーフレットの内容及び喫食時に調理工程や栄養成分等をまとめて映し出したスライドの内容についての回答割合は,「とてもわかりやすい」「わかりやすい」の回答割合を合わせて,共に100%であった.しかし,第2回,第3回で前回のカフェに参加した学生に対し,ほい大カフェのメニューを作ったかを質問したところ,約80%の学生が「いいえ」と回答した.

 自炊に対する考え方の回答割合は,「作るのが面倒」24%,「時間がない」22%,「食材が高い」16%であった.このような自炊に対する考え方があるから,ほい大カフェのメニューを作らないのではないかと考えられた.

 なお,第3回のカフェでは,口腔の健康づくりに関するリーフレットを配布し食事と口腔の健康づくりの関連を周知でき,大学祭では千葉市および千葉市食生活改善推進員にも参加いただき,他職種連携ができた.

(倫理規定)

 千葉県立保健医療大学の倫理審査委員会の承認(2018-16)を受け実施した.

(利益相反)

 開示すべきCOIはありません.

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