千葉県立保健医療大学紀要
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令和元年度学長裁量研究抄録
地域高齢者支援における大学生の体験型学習によって得られる学修効果の検証
細山田 康恵東本 恭幸河野 公子海老原 泰代岡田 亜紀子峰村 貴央
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2021 年 12 巻 1 号 p. 1_121

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抄録

(緒言)

 本学のカリキュラム変更に伴い,令和元年度の入学生から特色科目に「社会実習(ボランティア活動)」が加わり,2・3・4年生で開講されるが,詳細が決まっていない現状である.そこで,この社会実習の一つとして,本学学生に地域高齢者の方を対象に,体験型学習(昨年までのほい大健康プログラム)を行う.体験型学習への参加が,学生の意識に及ぼす影響を明らかにし,得られた学修効果等を評価し,科目等への活用を考える一助とし,より良いカリキュラム構築に寄与することを目的とする.

(研究方法)

 体験型学習を2日間で4回実施した.令和元年10月5日(土)午前:①A団地,午後:②B団地と11月2日(土)午前:③C団地,午後:④D団地で行った.テーマは栄養学科「自分の食事を調べてみよう」,歯科衛生学科「おいしく安全に食べる口の環境づくり」,理学療法学専攻「運動と認知トレーニングで認知症を予防しよう」とした.①②では,栄養学科と歯科衛生学科のテーマ,③④では栄養学科と理学療法学専攻のテーマで体験型学習を設定した.参加学生には,事前にオリエンテーションで内容を説明し,プログラム実施後にアンケート調査を行った.無記名式で匿名性を担保した.回収したアンケートの解析IBM SPSS Statistics 26による単純集計を行い,ディプロマ・ポリシーと関連させ,学生の学修効果を検証した.

(結果および考察)

 参加学生41名の学科専攻内訳は,栄養学科22名,歯科衛生学科4名,理学療法学専攻14名,作業療法学専攻1名で,学年は1年生14名,2年生15名,3年生4名,4年生8名であった.大学入学前に参加しボランティア活動・地域貢献活動は,ないが65.9%となり,ボランティア活動をしてない学生が多いことがわかった.今回参加したきっかけは,学内ポスター46.3%,教員からの誘い36.6%,昨年度までにほい大プログラム参加していた31.7%であった.また,ボランティアに興味があって参加した学生は19.5%,ほい大プログラムに興味があって参加した学生は14.6%に留まった.ボランティアを募集する際に,工夫が必要と考える。「対象者に配慮して適切に対応する方法を学べましたか」について,とてもそう思う,70.7%,そう思う29.3%であったことより,倫理観とプロフェッショナルリズムはほぼ達成できたと考えられる。「これまであなた自身が学んだことを発揮できましたか」について,よくできた29.3%,できた61.0%,あまりできなかった9.8%であった.これは,1年生が学習してない内容があったためと推定される.「今後もボランティア活動・地域貢献活動をしていきたいと思いますか」について,とてもそう思う80.5%,そう思う19.5%となり,生涯にわたる探求心と自己研鑽に繋がると期待される.

(結論)

 参加した学生のほい大健康プログラムへの関心は高く,社会実習にふさわしい内容で,ディプロマ・ポリシーを達成できることが示唆された.今後,「ほい大健康プログラム」をさらに改良し,千葉県の高齢者の健康寿命の延伸に寄与できるように取り組むことが必要と考える.

(謝辞)

 本研究を遂行するにあたり,田邊政裕学長,石井邦子学部長,歯科衛生学科の麻賀多美代先生,麻生智子先生,鈴鹿祐子先生,元理学療法学専攻の竹内弥彦先生,UR都市機構の伊藤公晴氏,小川恵丈氏に多大なご協力をいただきましたことに御礼申し上げます.

(倫理規定)

 本研究は千葉県立保健医療大学倫理審査委員会の承認(2019-16)得て実施した.

(利益相反)

 開示すべきCOI関係にある企業等はありません.

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