千葉県立保健医療大学紀要
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第13回共同研究発表会(2022.9.12~9.16)
新人看護師の夜勤導入におけるマネジメントの実際
富樫 恵美子西村 宣子
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2023 年 14 巻 1 号 p. 1_92

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抄録

(緒言)

 病院で働く看護職の交代制勤務における夜勤の拘束時間は,1回あたり16時間以上の二交代制が多く占めている.その一方,日本看護協会から「夜勤を行わなかった正規雇用の看護職員の割合は13.5%」(2019)との調査結果が報告されており,これは夜勤を行う部署に配属されている看護職員の7人に1人が夜勤を行っていなかったことであり,同時に夜勤者の確保の困難さを表している.

 夜勤の労務管理においては,日本看護協会より「看護職の夜勤・交代制勤務に関するガイドライン」が提言されている.しかし,これからの世代を担う新人看護師が,交代制勤務,とりわけ夜勤に適応していくことは身体的にも精神的にも大きなハードルとなり,離職を考えるトリガーとなりかねないと考えられる.更にコロナ禍において臨床実習の経験を十分に積めなかった世代においては,リアリティショックが大きいと予測できる.これらのことから,全国の約8割を占める中小規模病院のうち,関東圏内において,新人看護師の夜勤導入に向けて看護師長や夜勤指導者の中堅看護師,また,新人看護師がどのような心理的準備やマネジメントを行っているのか実際を明らかにすることを目的とし研究を行った.得られたデータから,今後どのようなマネジメントが新人看護師の夜勤導入に有用であるか,そのことから職場満足や就業継続に繋がり,地域医療を担う中小規模病院の看護の質を保証することを研究意義とする.

(研究方法)

1.研究対象者:関東圏内にある300床未満の中小規模病院に勤務する看護師長,夜勤指導看護師(中堅看護師),新人看護師

2.調査期間:2022年2月~3月

3.データ収集方法:対象者に半構造化インタビューをリモートにて実施

4.分析方法:インタビュー内容を逐語録にし,新人看護師,夜勤指導者(中堅看護師),看護師長の夜勤導入におけるマネジメントに関する記述を逐語録の中から抽出し,コード化し分類した.

(結果)

1 .調査対象者:新人看護師8名,夜勤指導者6名,看護師長6名

2.新人看護師の夜勤導入におけるマネジメントの実際

①夜勤導入基準:【病棟内で基準を作成している】【看護師長がプリセプターの意見を聞きながら判断する】【看護部で導入時期の目安がある】【日勤で重症患者も受け持てる】【日勤で報告連絡相談ができる】

②サポート体制:【夜勤配置人数にプラスしている】【初回は看護助手業務として体験する】【導入前に日勤の変則勤務でならす機会をつくる】【担当人数を段階的に増やす】

③振り返り:【夜勤業務終了ごとに行う】【先輩によって機会は異なる】【気になったときはその都度行う】【振り返り基準用紙に沿って行う】

④1人立ちの基準:【チームメンバーとして他のメンバーに声掛けができる】【自分の受持ちに責任を持った行動がとれる】【夜勤のチェックリストが全部埋まる】【報告連絡相談ができる】【緊急入院に対応できる】【夜勤メンバーの意見から判断する】

⑤新人看護師の準備:【夜勤導入前に先輩から情報収集を行う】【ネットで情報を収集する】【事前に受けたアドバイスに沿い学習する】

⑥夜勤指導者の配慮:【新人看護師が声を掛けやすいようにする】【できていることを褒めてから指導する】

(考察)

 新人看護師の夜勤導入において,病院ごとにその基準は異なり明文化されている施設,指導者層の考えに基づき決めている施設など多様な実態があることがわかった.また,事前の準備において夜勤指導者等のアドバイスをもとに学習を行っていることや,日勤業務で夜勤を想定した指導に対して取り組むなど,双方が効果的に関わっていることが示唆された.また,実際の夜勤時において,指導者は報告連絡相談といったコミュニケーションがとりやすいよう配慮をしていて,ソーシャルサポートとしての対人関係が良好であることで職場適応への良い影響をもたらしていることが考察された.

(倫理規定)

 本研究の実施にあたり,千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った.(承認番号:2021-17).

(利益相反)

 本研究に関して申告すべきCOI 関係にある企業等はありません.

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