2023 年 14 巻 1 号 p. 1_99
(緒言)
2014年の診療報酬改定を受けて全国に地域包括ケア病棟が作られるようになった.そこに勤務する看護師には今までにない専門性や実践における能力が求められていると考えられる.
地域包括ケア病棟の看護師が認識している特有の実践内容,地域包括ケア病棟での看護実践における苦労や困難,地域包括ケア病棟の看護師が認識している必要な実践能力を明らかにした上で,地域包括ケア病棟の看護師に求められる実践能力を検討することを研究目的とした.
(研究方法)
1.研究対象者
2021年6月に地域医療情報システム(日本医師会)を用いて検索し,A県内にあり地域包括ケア病棟が設置されて3年以上の総合病院30施設に研究依頼を行った.データに偏りが生じないようにするため,研究対象者は1施設につき2名程度とし依頼した.そのうち6施設から研究協力の同意が得られた.研究対象者は,A県内で地域包括ケア病棟に勤務して2年以上の看護師であり,地域包括ケア病棟での実践について現状をよく理解していると病棟師長が判断し,本研究協力に同意が得られた者とした.
2.データ収集期間
2021年11月~12月
3.調査方法および調査内容
半構成的面接法とし,対面あるいはオンラインによる調査を実施した.面接は面接ガイドを基に行い,対象者の許可のもとICレコーダーで録音した.調査内容は,基礎的情報(看護職の経験年数,看護職の経験内容,地域包括ケア病棟の経験年数),地域包括ケア病棟の看護師が認識している特有の実践内容,地域包括ケア病棟での看護実践における苦労・困難,地域包括ケア病棟の看護師が認識している必要な実践能力とした.
4.分析方法
面接内容から逐語録を作成した.逐語録の中から,特有の実践内容,苦労・困難,実践能力に関する文脈をそれぞれ抜き出し,抜き出されたものの意味内容を損なわずにコード化を行った.得られたコードについて,類似性と異質性に基づき分類しカテゴリ化を行い,質的帰納的に分析を行った.データの抽出・分析の過程では共同研究者間で検討を繰り返し行い,真実性の確保に努めた.
5.倫理的配慮
研究の趣旨,研究参加における任意性・安全性の保障,不参加や同意撤回による不利益を受けないこと等について十分説明し,署名を以て同意を得た.
(結果)
1.対象者の概要
研究対象者6名の看護師の経験年数は2年9か月から30年であり,地域包括ケア病棟での勤務経験は2年半から3年9か月であった.
2.地域包括ケア病棟での看護について
特有の実践内容では58コードが抽出され8カテゴリに,苦労・困難では48コードが抽出され10カテゴリに,看護師が認識している必要な実践能力では44コードが抽出され4カテゴリに集約された.
(考察)
地域包括ケア病棟の看護師に求められる実践能力として,<患者・家族への支援能力><連携調整力><地域包括ケアシステムを維持・発展させるマネジメント力>の3つの側面から成る,【経過から今後の身体状態の見通しを立て,かかわる力】【退院後を見据え,患者・家族のニーズを見出す力】【患者・家族の望む生活に向けて調整する力】【患者・家族の状況に合わせて,退院に向けて多職種と連携し調整する力】【患者・家族に合った制度やサービスを理解し調整する力】【地域包括ケア病棟の機能を維持していく力】【社会資源の不足や制度の改善の必要性を発信していく力】の7つの実践能力が見い出された.
(倫理規定)
本研究は千葉県立保健医療大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号2021-16)
(利益相反)
本発表内容に関して申告すべきCOI状態はない.