2023 年 14 巻 1 号 p. 1_100
(緒言)
2025年の我が国の認知症者数は約700万人,軽度認知障害者は400万人に上ると推計されており,認知症の予防やケアに関する研究を推進していく必要がある.特に,認知症の人本人を対象とした研究の推進が求められている1)が,認知症の人は意思決定能力が無いとみなされ意向を尊重されないことがある.研究においてインフォームド・コンセントを与える能力は,対象者への負担や予測されるリスクとベネフィットとの関係で異なるのであり,認知症だから意思決定能力がないと言い切ることはできない.また,研究は治療とは異なり,本人への利益ではなく将来の患者にとっての利益すなわち社会貢献の側面があり,代諾により研究対象者になることは,他者により社会貢献を強制されていることになる2).
これらを背景に,本研究の前段階で,認知症の人本人の意向を尊重し,認知症の人が安全に安心して研究に参加できることを目指し,「認知症の人を対象とした看護・介護・リハビリテーション領域の研究における倫理的配慮のためのガイド(以下,ガイド)」を開発した3).本研究では,このガイドをさらに洗練させることを目的にグループインタビューを実施することとした.
(研究方法)
1.データ収集方法
本研究の前段階で作成したガイドに関する意見を求めるグループインタビューを実施した.対象者は,①生命倫理研究者(研究倫理審査委員経験有る者),②認知症の人を対象とした研究を実施・公表した経験のある研究者とし,①②併せて3名の構成で,異なる対象者で2回,いずれもオンラインで実施した.
2.分析方法
グループインタビューで得られたデータを逐語録にし,逐語録から,ガイド記載内容の中で分かりにくい部分,加筆や修正が必要な部分に関する語りを抜き出した.抜き出した語りを基に“ 研究者が,認知症の人を対象とした研究を計画,実施するために必要な倫理的配慮を考え実践できる” ようにガイドの修正をおこなった.
(結果)
1.対象者の概要
対象者は6名で,生命倫理研究者2名,リハビリテーション領域の研究者2名,看護領域の研究者2名であった.
2.ガイドの洗練
得られた意見は,文章表記に関するもの(誤解を招く表現,使用している言葉の吟味,用語の使用),体裁に関するもの(文字の量,図表挿入の提案),ガイドの構成に関するもの(研究倫理3原則の説明や基本方針の追記,章立ての順序の再考,参考文献の追記)であった.また,全体を通して,ガイドであるからこそ内容の重みを考慮することの指摘があった.研究者からは,認知症の人が対象となる研究の計画・実施における留意点や重要事項に関する具体的な提案があった.
これらの意見,提案をもとに,ガイドの修正をおこなった.
(考察)
本ガイドは,認知症の人本人からインフォームド・コンセントを得ることを目指し,研究に伴い発生する可能性のあるリスクの具体的な想定およびその最小化について検討する必要性があることや,本人への説明方法を十分検討することを強調したものである.今後は,本ガイドの活用に向けて取り組む必要がある.
(倫理規定)
本研究は,千葉県立保健医療大学研究等倫理委員会の承認を得て実施した.(承認番号2021-27)
(利益相反)
本研究において開示すべきCOIは存在しない.