2024 年 15 巻 1 号 p. 1_13-1_21
本研究の目的は,助産ケアにおける分娩期ヒヤリ・ハット事例の発生要因と防止策の現状をP-mSHELLモデルを用いて明らかにすることである.方法は,著者らの先行研究1)で得られた助産師が最も印象に残る分娩期ヒヤリ・ハット事例『速い分娩経過の判断遅れ』45事例と『抗菌薬点滴の間違い』32事例を対象に,助産師の捉える発生要因と防止策についてP-mSHELLモデルの7つの構成要素別にカテゴリを抽出した.その結果,分娩期ヒヤリ・ハットの主な発生要因は,速い分娩は予測が困難,人員不足,分娩経過の判断不足,マニュアル違反,連携不足等であった.防止策は,速い分娩の理解,人員確保,分娩経過の判断力強化,マニュアル作成,連携の強化等が必要と考えられていた.分娩期の事故及びヒヤリ・ハット防止には助産師個人の能力向上と組織的な取組み,併せてテクニカルとノンテクニカルスキルの両側面からのアプローチの重要性が示された.