抄録
目的:プライマリケアの現場には,関節痛を主訴とする多くの患者が来院する.これらの患者の中には関節の疼痛のみで炎症所見を欠く症例(非炎症性疾患)も含まれ,しばしば局所の安静と保存的加療のみで症状の軽快を得る.一方,炎症性疾患には感染やリウマチ性疾患等が挙げられ,早期の診断と積極的な加療が必要となる場合が多い.抗CCP抗体は関節リウマチ(RA)に特異的な自己抗体で,「関節炎」患者のRAの診断補助に大きな意義を持つ.しかし,「関節痛」を呈する患者に抗CCP抗体を積極的に測定することが,これらの患者に含まれる早期RAの診断補助に有用かどうかは不明である.今回,我々は関節痛を主訴に来院した患者に抗CCP抗体を測定し,関節痛患者に対する抗CCP抗体測定がRAの進展予測と診断補助に有用かどうかを検討した.
対象・方法:関節痛を主訴に来院した患者100名に抗CCP抗体を測定した.そして,患者の初診時診断と1年後診断を評価した.
結果:抗CCP抗体は全症例中40例(40%)で陽性であった.また,初診時26例がRAと分類された.関節痛患者の1年後のRAへの移行を抗CCP抗体の有無で見ると,抗CCP抗体陽性の40例のうち1年後に30例(75%)がRAと分類されたのに対し,抗CCP抗体陰性の60例では4例(7%)のみがRAと分類された(p<0.001).
結論:関節痛患者において抗CCP抗体のRAに対する特異性は84.9%と高く,抗CCP抗体は「関節炎」患者のみでなく,「関節痛」患者のRA進展予測と診断補助にも有用である可能性が高いと考えられた.