抄録
目的:関節リウマチ(RA)に合併した線維筋痛症(FM)の合併頻度,及びその臨床的特徴を調査する.
対象・方法:FM症状を呈していないRA患者88例(男性11例,女性77例,調査時平均年齢58.3歳±13.3)について圧痛点の検討を行った.RA215例(男性42例,女性173例,調査時平均年齢58.5歳±13.8)においてFMの合併頻度を調査し,RAに合併したFMの抑うつ状態を中心にその臨床的特徴を検討した.なお,FMの診断は米国リウマチ学会1990年のFM 分類基準を用い,調査時及び過去にFM症状を呈していた患者を後ろ向きに抽出した.
結果:1)FMを合併していないRAの平均圧痛点数は2.7であった.2)RA215例中20例(9.3%)にFMを合併していた.3)20例中2例は初診時FM症状を呈しており平均1年でRAに移行した.4)初診時RAに合併したFMは12例で,そのうち10例(83.3%)に抑うつ状態を合併していた.5)RAの経過中FM症状が出現した6例中5例(83.3%)に抑うつ状態が認められそのうち3例にCRPの上昇を,2例に明確なストレッサーが確認できた.6)RAに抑うつ状態を合併しているにも関わらず,FM分類基準を満たさない4症例が存在した.
結論:発症早期のFMはRAの前駆症状の可能性を念頭におく.RAに合併したFMの原因として抑うつ状態は重要な因子であるがFM=抑うつ状態ではなく,FM体質に加えて,抑うつ状態,精神的,肉体的なストレス,CRP上昇等の炎症性ストレスが複雑に絡み合ってFMが惹起されるものと思われる.