臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
総説
生物学的製剤に特徴的な合併症,副作用対策
森信 暁雄
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 22 巻 4 号 p. 367-371

詳細
抄録
   生物学的製剤はRA患者の寿命を延ばすことができる時代となった.一方で,生物学的製剤の副作用には患者の死亡につながるものもあるが,本邦での市販後調査によると,その原因は,感染症と間質性肺炎で半数を超える.欧米のレジストリー研究によると,生物学的製剤は感染症リスクをあげる.発症時には迅速な対応と,日和見感染による肺炎,敗血症を考慮しなければならない.特に注意すべき肺炎がニューモシスチス肺炎であり,死亡例も散見される.発熱,呼吸困難,スリガラス影をみた際に,ニューモシスチス肺炎を必ず鑑別に上げなくてはならない.今後ST合剤による予防も考えるべきである.結核は生物学的製剤に投与下では比較的おこりやすい.ツベルクリン反応2+陽性以上の患者では,INHによる予防投与を行わないと高率に結核を発症する可能性がある.実際,結核発症者の多くではINH予防投与が行われていなかった.このような感染症の発症には,一般に,高齢,肺疾患の合併,ステロイド投与などがリスクとなるので,そのようなケースでは慎重な経過の観察が望まれる.感染症による死亡を防ぐことにより,生物学的製剤の有用性がさらに高まるものと思われる.
著者関連情報
© 2010 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top