臨床リウマチ
Online ISSN : 2189-0595
Print ISSN : 0914-8760
ISSN-L : 0914-8760
総説
生物学的製剤下の手術
酒井 良忠
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 23 巻 3 号 p. 156-161

詳細
抄録

   近年関節リウマチの治療は,生物学的製剤の登場により大きく進歩した.しかしながらこれらの薬剤は強力な免疫抑制作用を持ち,感染症の副作用に注意が必要とされる.このため,整形外科術後の感染や創傷治癒遅延が懸念される.日本リウマチ学会では,TNF阻害療法,トシリズマブ,アバタセプトについて使用ガイドラインを定めており,その中に周術期における使用時に,感染や創傷治癒遅延のリスクについて記載があり,適切な期間休薬を行うべきとしている.基礎的な研究や,各生物学的製剤の術後感染,創傷治癒遅延についての研究報告では,これら合併症の可能性について完全には否定できないものの,適切な休薬期間を設定すれば,安全に手術を行える報告が多数をしめている.
   また,自験例の調査でも,検討項目において,有意な差があったものはプレドニゾロン投与量のみであり,生物学的製剤における感染,治癒遅延例は1例のみであった.
   以上から,生物学的製剤は,術後の感染や創治癒遅延を必ずしも引き起こすものではなく,生物学的製剤の導入を行ってPSL投与量の減少,もしくは中止させることが,術後の感染や創治癒遅延を減少させると考えられる.

著者関連情報
© 2011 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
前の記事 次の記事
feedback
Top