抄録
本稿では,関節リウマチ(以下RA)の上肢病変に対し,作業療法(以下OT)で実施するスプリント(治療用仮装具・簡易装具)療法について述べる.各関節の病変に適応するスプリントにはどのようなものがあるのか? 効果はあるのか? 患者,治療者,医療関係者の多くが疑問や不安を感じていると思われる.古くから治療法として確立している分野であるにもかかわらず,知名度が低く,効果を述べる論文も現在は少ない.教科書的には,各関節の変形に適応するスプリントの紹介はあるが,そのスプリントを装着することでどのような効果が得られるのか,具体的に表現されている文献や論文は少ない.RA治療を語る際,必ず装具やスプリント療法が紹介されるが,多くが出来上がった変形に対する進行予防のものが多く,紹介されているほとんどが昔から紹介されているものと変わらないスプリントであり,古い時代のものが引用されているように思われる.文化や風習,人の価値観,生活環境,社会環境の変化,そして目覚ましい医療の進歩などが起こっているにも関わらず,スプリント療法には大きな進歩が感じられないことに,作業療法士として責任を感じる.生物学的製剤(以下Bio)の効果で,臨床的寛解,構造的寛解,機能的寛解が望める時代に対応するスプリントやまだまだ機能的寛解,構造的寛解までに至らない症例に対するスプリントなど,幅広く考えなければならない.筆者の経験より,スプリントによって,骨・関節のアライメントの改善や弱化した軟部組織の代用により関節の支持性向上や安定感を取りもどし,筋・関節運動を促進し,身体活動を効率よく発揮でき,生活動作や社会参加などを可能にし,QOL向上に効果をもたらすスプリント療法の事例を報告する.