抄録
ループス腎炎(LN)は末期腎不全に至り,透析導入を余儀なくされる全身性エリテマトーデスにおける重篤な合併症の一つである.International Society of Nephrology/Renal Pathology Society 2003によってLNはclass IからVIに分類され,class毎の治療法選択が推奨されている.そのためには腎生検での組織診断を行う事が望ましいが,侵襲的なために施行できない症例が存在する.以上の理由から腎組織における糸球体および尿細管間質性障害と相関する簡便な検査が望まれており,尿中バイオマーカーに対する研究が現在まで行われてきた.我々は急性腎障害の尿中バイオマーカーとして報告されているKim-1 (Kidney injury molecule-1)についてLN疾患活動性との相関を検討したところ,尿中Kim-1は活動性LNでは非活動性LNに比べて上昇を認め,腎病理組織において尿細管Kim-1発現と糸球体および尿細管間質性障害との相関を認めた.また,LNモデルマウスであるMRL-Faslprマウスに対して抗Tim-1 (T cell immunoglobulin mucin domains-1)抗体(Tim-1はKim-1と同意語)を投与することで生存率は改善し,糸球体障害,尿細管間質性障害の改善および蛋白尿も低下した.また炎症性サイトカイン低下と制御性T・B細胞の増加を認めた.以上からKim-1 (Tim-1)はLNにおける尿中バイオマーカーとしてだけでなく,治療標的となり得る可能性が考えられた.