臨床リウマチ
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原著
関節リウマチにおける結節性病変の多様性とメトトレキサート
中村 正前崎 哲広高岡 宏和稲葉 恵吉永 健北岡 光彦
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2016 年 28 巻 1 号 p. 66-74

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抄録
目的:関節リウマチ(RA)のメトトレキサート(MTX)治療下も含めた結節性病変の発症機序は未だに不明であり,自験例を報告して文献的考察を行なった.
方法:MTX加療中に発症した自験3RA例における結節性病変をMTXとの関連で検討した.
結果:MTX使用下に病理組織学的な多様性を呈する結節性病変が生じた.症例1では,MTX加療中に疾患活動性の増悪に伴い多発性に皮膚結節が出現し,rheumatoid neutrophilic dermatitisの病理組織診断であった.疾患活動性の増悪で好中球優位の炎症細胞浸潤を伴い,多核巨細胞の出現や肉芽腫様組織がみられ,MTXを減量しタクロリムスに変更することで結節は縮小・消失した.症例2では,良好なRAコントロール中に肺多発結節影を認め,胸腔鏡下肺生検で肺結節にはEBウイルス(EBV)関連抗原陽性のリンパ球浸潤があり,MTX関連リンパ増殖性疾患としてリンパ腫様肉芽腫症と診断し,MTX中止で結節は消失した.症例3では,MTX使用下に全身性リンパ節腫大を認め,腫大リンパ節生検で異型リンパ球の腫瘍性増生があり,EBV再活性化は認めず,MTX関連リンパ増殖性疾患としてMTXを中止して化学療法を施行し,腫瘤は縮小・消失した.
考察:RAのMTX使用下も含めた結節性病変は臨床的に多彩である.MTXの作用のひとつに単球・リンパ球からのアデノシン産生増加がある.アデノシンはアデノシンA1受容体を介し,実験的に細胞形態変化や肉芽腫様組織像,多核巨細胞形成,等を惹起し,あたかも症例1に認められた結節病理組織像に類似した組織形態像を醸成し,RA炎症における結節病変形成にアデノシンが関与していることが類推された.症例2ではMTXの抗リウマチ作用とEBV再活性化との関連が指摘され,症例3ではMTXの免疫抑制効果に関連した悪性リンパ腫が認められ,いずれもMTXによる宿主の免疫機構破綻が推測された.RA結節病変の病理組織学的多様性はRA疾患活動性,宿主免疫状態,MTX薬理作用などと複雑に連関し,結節病変発症機序のひとつにアデノシンを介した宿主の炎症・免疫病態,あるいは,EBVなどの感染性因子との相関が予想された.
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© 2016 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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