2019 年 31 巻 4 号 p. 300-306
【目的】成人スチル病(ASD)の治療に,トシリズマブ(TCZ)が有効であるとの文献報告がある一方で,投与後にマクロファージ活性化症候群を合併したとの報告もあり,安全性についての検討を要する.当科の経験を詳述することで,実臨床におけるTCZ使用法を検討する.
【対象・方法】当科では7例のASD症例にTCZ治療を行った.その全例について,投与後3か月間のステロイド投与量,臨床データの変動を後方視的に解析した.
【結果】年齢中央値(四分位)は44歳(41-59)で,3例が男性だった.5例が新規発症で,2例が再発例であった.すべての症例で,TCZ 8 mg/kgが1-6週の間隔で点滴静注された.7例とも,TCZ投与によりステロイドの迅速な減量が可能であった.1例は腹腔内感染症のため,投与を中止した.7例中6例で,TCZ初回,または二回目の投与後に,一過性の血小板減少が観察された(うち4例は同時にフェリチン値の再上昇を認めた).いずれも一過性であり,治療の継続が可能であった.
【結論】急性期のASDでは,TCZ開始後にデータ異常(血小板減少とフェリチン再上昇)が高率にみられるが,十分量のステロイド治療下にTCZ投与を継続すると,データ異常は一過性であり,安全な寛解導入が実現した.