2020 年 32 巻 4 号 p. 304-309
生物学的抗リウマチ薬や経口JAK阻害薬の高い有効性は,関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療の向上に貢献してきたが,多種類の分子標的薬の使い分けが課題となっている.我々はマルチカラーフローサイトメトリーを用いて末梢血免疫細胞のフェノタイプを解析し,病態の把握,分子標的の妥当性の評価を試みてきた.乾癬性関節炎のように特徴的なサイトカインが病態に関与する疾患では,末梢血のリンパ球フェノタイプにより亜集団に層別化され,病態に合わせた分子標的治療の最適化が示唆された.全身性エリテマトーデスでは,IFN関連遺伝子発現の高い患者に於いてIFN標的治療が高い効果を示し,2つの亜集団に分類するだけで薬剤の選別を可能とした.非均一性の高い自己免疫疾患の治療では,分子標的薬の使い分けを目指す新しい治療体系,治療戦略の構築が不可欠であり,プレシジョンメディシンへの期待が大きい.