臨床リウマチ
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原著
関節リウマチ治療におけるJAK阻害剤トファシチニブの開発と日本人データ
望月 芳香杉山 直伸森嶋 洋輔平野 敏隆廣瀬 智弘
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2021 年 33 巻 2 号 p. 138-149

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抄録

 関節リウマチ(RA)は滑膜炎や関節破壊を特徴とする自己免疫疾患の一つである.明確な発症メカニズムは不明であるが,病態形成に関わるサイトカインが次第に明らかとなり,TNFやIL-6/IL-6受容体等を標的とした生物学的製剤が治療に応用されるようになった.これらの薬剤により優れた効果が得られる一方で,効果不十分例や有害事象による治療中止例も少なからず存在することから,新規メカニズムによる治療薬の開発が必要とされてきた.その中,臓器移植の免疫抑制剤として見出だされたCP-690,550(トファシチニブ)がRAに対する治療効果を有することが明らかとなり,開発が進められた.国内で初めて承認されたヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるトファシチニブは,Ⅰ型及びⅡ型サイトカイン受容体下流のJAK-STAT経路の過剰な働きを抑制すると考えられている.RAの病態には種々の炎症性サイトカインが関与しているため,JAK-STAT経路をRAの治療ターゲットとすることは理にかなっている.本稿ではトファシチニブについて,本邦における開発の経緯と,日本人RA患者に対するエビデンスを中心に解説する.

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© 2021 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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