臨床リウマチ
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33 巻, 2 号
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誌説
総説
  • 藤尾 圭志
    2021 年 33 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)の発症には遺伝素因が関与するが,最も強い疾患感受性遺伝子はヒトMHCクラスIIをコードするHLA-DRB1である.ゲノム情報からの疾患リスク予測が進展しているが,RAの層別化や予後予測においてHLA遺伝子の重要性はさらに増していくことが予想される.従来「共有エピトープ」(shared epitope: SE)と呼ばれる5つのアミノ酸配列モチーフを含むHLA-DRβ鎖をコードするHLA-DRB1対立遺伝子とRAの関連が注目されてきた.最近の遺伝学的解析では,RAとの関連において特に重要なHLA分子内でSEとは異なる5つのアミノ酸が同定されている.HLA-DRB1遺伝子はRAの発症リスクだけでなく,疾患活動性,治療反応性,骨破壊,さらには生命予後とさまざまな臨床パラメータと関連することが知られている.その一方でなぜHLA遺伝子がRAの病態と関連するのかは,さまざまな説があるがまだ明らかではない.本稿ではRAにおけるHLA遺伝子に関する知見をまとめ,臨床における活用の可能性を概説する.

  • 林 綾野
    2021 年 33 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(以下RA)は疾患自体の病態,ステロイド使用などにより骨粗鬆症との関連が強いと言われている.当院ではRA患者の約半数が骨粗鬆症を合併していた.RA患者は骨折の相対危険度が健常人より高く,骨粗鬆症による骨折は死亡リスクの上昇にもつながるが,認知度が低いことや自覚症状を感じられないことなどから,自分は大丈夫と過信している患者も少なくない.当院では骨粗鬆症の早期発見,早期治療介入,治療継続を目的として骨粗鬆症リエゾンサービス活動を行なってきたが,その対象は主に中高年女性,ステロイド服用患者,骨折患者に加えRA罹患患者である.骨粗鬆症治療は薬物治療だけではなく,食事,運動,合併症予防など多岐に渡る.また,骨粗鬆症は治療継続率の低さも問題である.そのため,患者の病態や背景を考慮した適切な薬剤選択や多職種による患者サポートが関節リウマチ患者への骨粗鬆症ケアの鍵となる.

原著
  • 黒田 毅, 長谷川 絵理子, 若松 彩子, 佐藤 弘恵, 小林 大介, 中枝 武司, 成田 一衛, 和田 庸子, 中野 正明
    2021 年 33 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)患者の高齢化は若年発症RA患者の高齢化に加え,高齢発症の患者も増加している.我々は1991年のRA429症例と2018年のRA368例について横断的検討を行い年齢,性比を検討した.その結果1991年の平均年齢は55.3歳でRA患者のピークは50歳代と60歳代にあり,2018年の平均年齢は66.9歳で,70歳代にピークが認められ(P=0.000),高齢化が確認された.性別の検討では2018年は1991年に比べて男性患者の増加が認められた(P=0.003).2018年のRA症例の検討では,65歳以上で発症した高齢発症RA(EORA)では初発関節として大関節の割合多く65歳未満の若年発症RA(YORA)では小関節の発症が多かった(P<0.01).RFはYORAが73.1%,EORAが60.7%(P=0.02),抗CCP抗体はYORAが68.4%,EORAが58.3%(P=0.034)とRFと抗CCP抗体共にYORAで陽性率が高かった.治療ではMTXの使用頻度,量ともYORAが多く使用されていた.アミロイドーシスは全体の1.6%に存在し,全例がYORAで解析時に65歳以上であった.

  • 中野 真依, 東 直人, 谷 名, 壺井 和幸, 吉川 卓宏, 松井 聖, 矢口 貴志, 竹末 芳生, 中嶋 一彦, 和田 恭直, 佐野 統
    2021 年 33 巻 2 号 p. 113-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     68才,男性.多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療中急性肺炎を発症.抗菌加療が奏功せずGPA増悪も疑われたが,気管支肺胞洗浄液(BALF)よりNocardia属菌が検出されノカルジア肺炎と診断.抗菌薬加療で速やかに改善した.起炎菌はNocardia farcinicaと同定された.ノカルジア肺炎は免疫抑制患者では致死的になりうる.診断に難渋することが多いが,BALFの培養検査が有用である.また,菌種により病状や薬剤感受性が異なるため菌種同定も重要と考える.

  • 礒田 健太郎, 辻 成佳, 原田 芳徳, 吉田 祐志, 吉村 麻衣子, 松岡 秀俊, 沖田 康孝, 村上 輝明, 橋本 淳, 大島 至郎, ...
    2021 年 33 巻 2 号 p. 121-131
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者において,栄養状態が感染症の発生に与える影響を調査した.

    対象・方法:入院を要する重症感染症を合併したRA患者(入院患者群)と,感染症入院のない患者(非入院患者群)との患者背景,臨床所見,治療内容,栄養状態を比較した.栄養状態の指標には予後栄養指標prognostic nutritional index(PNI)とcontrolling nutritional status(CONUT)を用いた.

    結果:PNIとCONUTによる栄養状態は,入院患者群では非入院患者群より有意に不良であり(共にP < 0.001),特にPNI低値は重症感染症発生の予測因子であった(オッズ比:1.749, 95%信頼区間:1.110-2.755, P < 0.001).

    結論:RAにおいて感染症は重大な合併症である.感染症を合併しないように安全に治療を行うためには栄養状態の評価と管理が不可欠である.

  • 松永 大吾, 瀧澤 勉
    2021 年 33 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     リウマチ性多発筋痛症(PMR)は,高齢者に発症する原因不明の炎症性疾患である.診断は症状と検査所見の組み合わせによるため,PMRには複数の病態が混在している可能性がある.以前著者らは,Crowned Dens症候群の頚椎MRI画像にみられる環軸関節の液体貯留像をBuffalo signと名付けた.典型的なPMRの症状と臨床経過を辿った高齢女性3例でもこの所見が確認されたため,報告する.

  • 望月 芳香, 杉山 直伸, 森嶋 洋輔, 平野 敏隆, 廣瀬 智弘
    2021 年 33 巻 2 号 p. 138-149
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(RA)は滑膜炎や関節破壊を特徴とする自己免疫疾患の一つである.明確な発症メカニズムは不明であるが,病態形成に関わるサイトカインが次第に明らかとなり,TNFやIL-6/IL-6受容体等を標的とした生物学的製剤が治療に応用されるようになった.これらの薬剤により優れた効果が得られる一方で,効果不十分例や有害事象による治療中止例も少なからず存在することから,新規メカニズムによる治療薬の開発が必要とされてきた.その中,臓器移植の免疫抑制剤として見出だされたCP-690,550(トファシチニブ)がRAに対する治療効果を有することが明らかとなり,開発が進められた.国内で初めて承認されたヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤であるトファシチニブは,Ⅰ型及びⅡ型サイトカイン受容体下流のJAK-STAT経路の過剰な働きを抑制すると考えられている.RAの病態には種々の炎症性サイトカインが関与しているため,JAK-STAT経路をRAの治療ターゲットとすることは理にかなっている.本稿ではトファシチニブについて,本邦における開発の経緯と,日本人RA患者に対するエビデンスを中心に解説する.

誌上ワークショップ リウマチ看護の工夫と実践
  • 右田 貴子
    2021 年 33 巻 2 号 p. 150-158
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     強力な治療薬剤の登場により,リウマチ患者の膝や股関節などの大関節の手術は減少したが,足趾手術の需要はむしろ増加傾向にある.私が行った市民講座でのアンケート調査では約9割の方が足に何らかのトラブルを抱えていた.実際に,外反母趾や槌趾,重複趾,扁平足,舟底変形,胼胝,鶏眼,陥入爪,靴との摩擦や静脈鬱滞による潰瘍形成等,様々なトラブルを目にする.このような患者さんは足にあわない大きめの靴を履いている事が多く,フィットした靴がないという悩みを持ちながらも,リウマチだから仕方が無いと諦めているのが現状である.

     当クリニックのフットケアは,初診時と足部に疼痛や感染等があった時に行っている.

     足のアーチやアライメント,足病変,履き物の状態や歩容等,足をとりまく環境についてもアセスメントする.疼痛や感染が無くても,すでに横アーチが低下していて疲れやすいと感じている方が多い.このような場合,アーチを整えることが足の負荷を減らし変形の予防に役立つと実感している.

     胼胝・鶏眼に対してはグラインダーで除去,ペディグラスの技術で陥入爪や巻き爪の補正を行うが,それだけでは再発が繰り返される.再発予防で一番大切なことは足の環境を変えることである.

     足に触れ,気持ちに寄り添うと,患者さんとの信頼関係が構築される.靴の選択や履き方の見直しで,楽に歩行でき,おしゃれも楽しめると,気持ちの持ち方にも変化があり,行動範囲も広がる.フットケアは患者さんに「希望」を届け「Active Life」を支える,重要なベースになると考える.

  • 洲崎 みどり
    2021 年 33 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     WoCBA(Woman of Child-Bearing Age)とは,出産可能年齢の女性のことを言う.2018年に報告された女性の平均初婚年齢と第一子出産年齢は30歳前後と言われている.妊娠については30歳代後半になると妊孕性が低下すると言われているが,昨今の多様化するライフスタイルの変化による晩婚化があげられているため,不妊の問題が増加傾向である.RAの好発年齢は30~50歳であり,WoCBAでRAを罹患している患者が該当する.しかし,生物学的製剤やJAK阻害剤の登場により,疾患活動性が良好になり,妊娠することへの期待が持たれている.妊娠~出産後のRAに対するケアは,時期によってその都度指導が必要であり,妊娠・出産に対する未知のイメージに加え,病状の変化について指導を行わなければならない.妊娠初期では,RAの悪化に対する不安の軽減,不妊治療の末,妊娠した場合の患者への精神的サポートが必要になる.妊娠中期では,体重増加による関節に与える負担の軽減について説明し,妊娠後期では,出産後の治療開始時期について,特に「授乳」に対する思いについて傾聴することが重要である.出産後,RAの治療を開始するタイミングとともに「断乳」についての指導は必須である.WoCBA世代のRA患者にとって,妊娠・出産をサポートするために,看護師は,医師と患者との架け橋となって支援していく.

  • 田口 紗理, 駒ヶ嶺 正隆
    2021 年 33 巻 2 号 p. 165-169
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     関節リウマチ(以下RA)の薬物療法はメトトレキサート,生物学的製剤の登場によりパラダイムシフトと言われるほどの著明な進歩があったが,JAK阻害剤の登場により更に治療薬の選択肢が広がり,今やRAの薬物治療は円熟期を迎えつつある.更に,関節エコーやMRIの導入によりこれまで以上に精確な病態の把握が可能となりリウマチ診療に有用な情報が多様化しているため,それに伴って日本リウマチ財団認定ケア看護師(以下,ケア看護師)のリウマチ診療における役割が大きくなっている.当クリニックでは関節エコー検査はケア看護師が施行しているが,その結果医師の負担が軽減し,また,看護師による細やかな情報収集が可能となった.一方,DAS28CRP及びSDAI寛解を達成した49症例に対しエコー検査を施行した結果,臨床的寛解とエコー所見の乖離を36例(73%)に認めた.DAS28やSDAIなどの総合的疾患活動性指標だけでなく、看護師による関節エコー評価もRAの状態を把握する上で有用と考えられた。

  • 新井 由美子
    2021 年 33 巻 2 号 p. 170-175
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/07/16
    ジャーナル フリー

     リウマチ専門クリニックである私達の目標は,リウマチ膠原病疾患の早期診断・早期治療介入を実現させつつ,安全・安心とともにその医療が継続できる環境を提供することである.そのためには4つの医療連携,すなわち,近隣のクリニックや病院,大学病院,在宅医療,そして,他県の医療機関との双方向のつながりが重要になる.今回,当クリニックのデータを解析すると,非専門医との日頃からの連携は血清反応陰性の関節リウマチに対する早期診断・早期加療に特に有効だった.また,専門医の受診動機には,薬剤師やケアマネージャー,連携施設の看護師からのアドバイスも重要であることも示唆された.残念ながら,リウマチ専門医やリウマチナースは地域に偏在しているのが現状である.そこで,専門医による非専門医へ情報共有と,看護師間のネットワークの拡大が医療の地域格差を解消するひとつの解決策だと,私達は考える.

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