2022 年 34 巻 1 号 p. 4-15
生・老・病・死は人間を取り囲む環境がどのように変化したとしても,人間にとって避けることのできない永遠のテーマであろう.人は誰でも病気になる可能性をもっており,病気はどのようなものでもChronicity(慢性性)という特性をもつ可能性がある.すなわち,私たちは,すでにさまざまな長期にわたる病気とともに生きているのである.現代社会の求めるものが,効率的に働き利益を上げることや活動的かつ積極的に日々を送ることであるとすれば,病気や障がいにより,それまでのように効率的に働けなくなったり,日々を活動的に過ごすことができなくなったりすることは決してめずらしいことではない.そうなると,私たちは社会的に受け入れられるための特性の一部を失い,自分の特質が他者のそれとは異なっており,社会の期待に応えることができなくなる.そのとき,人は受け入れられた状態から無視された存在となり,これがスティグマに繋がる.場合によっては,自分の存在に価値を見出すことができずに深い悲しみを抱き,社会的に孤立することもある.しかしながら,人生においてこのような不測の出来事に遭遇するのは,病気や障がいだけではもちろんない.私たちは日常に生じるさまざまな危機的体験のなかで,ひとり一人がもつ回復力(レジリエンスresilience)を礎として,その先の日常を歩み続けようとする.
本稿では,RAにおける心理社会的支援について,セルフスティグマとそれを乗り越える力としてのレジリエンスをふまえて考えてみようと思う.