2023 年 35 巻 1 号 p. 35-43
【目的】ドライマウス患者では唾液中重炭酸塩(HCO3−)濃度の低下に伴い唾液緩衝能と口腔内pHが低下する.これはう蝕,カンジダ症と関連する.重曹うがいは唾液緩衝能を補うと考えられ,シェーグレン症候群(SS)患者における有用性を調査する.
【対象・方法】重曹うがいを行なったSS患者27人で重曹うがいの実施状況や使用感,ドライマウスに関する症状の変化を問診で調査した.薬物治療や日常の対策は従来通り継続した.
【結果】実施回数は1日2回が最も多く(33.3%),実施場面は就寝前(66.7%),食後(63.0%)が多かった.使用感は「とても良い」または「良い」が74.1%,ドライマウス症状が軽減した者が66.7%と多かった.良かった点として「口の中がスッキリする」が最も多く(51.9%),「ネバつきが軽くなる」(29.6%),「手軽に作れる」(25.9%),「安価」(22.2%)が続いた.「舌の荒れ/口角炎/口内炎が少なくなった」という回答もあった(14.8%).悪かった点は「面倒」が最も多く(37.0%),「味」(22.2%)が続いたが,「特になし」も比較的多かった(25.9%).使用中重篤な有害事象はなく,「今後もしようと思う」が74.1%と多かった.
【結論】重曹うがいはSS患者のドライマウス症状を軽減し,簡便性と安全性も高く,SS患者のセルフケア法として活用できると考える.