臨床リウマチ
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35 巻, 1 号
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誌説
総説
  • 門野 夕峰
    2023 年 35 巻 1 号 p. 4-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

     関節の単純X線画像を判断する際には撮影条件を考慮する.RAでは関節面辺縁の骨びらんが特徴的所見であるが,炎症が沈静化した状況では強直することもある.疾患活動性のコントロールが十分でない場合には頚椎に不安定性を生じることもある.PsAの関節炎では関節内は骨吸収,関節外では骨形成が起こりpencil in cup変形を呈する.

     ASでは仙腸関節の強直が特徴的であるが,骨盤正面像では下半分のみに関節面があることを意識する.脊椎では椎間板線維輪に付着部から真っ直ぐに立ち上がる靭帯骨棘が特徴的であり,PsAでは付着部からやや離れた部位から膨らんだ靭帯骨棘が見られる.ASやPsAの鑑別診断としては,PAO,DISH,OCIが重要である.

     体軸のMRIでは,炎症の存在と構造的変化を見極めることが重要である.炎症はT1強調像低信号かつ,STIR画像または脂肪抑制T2強調像で高信号に描出される骨髄浮腫の有無で判断する.構造的変化はT1強調像で判断する.

原著
  • 江崎 慈萌, 西山 進, 大橋 敬司, 相田 哲史, 吉永 泰彦, 田中 晃代
    2023 年 35 巻 1 号 p. 13-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    目的:シェーグレン症候群(SS)の精査を施行した患者の自覚症状と他覚所見との関係について検討した.

    方法:2017年2月から2021年6月に当院を受診し,自覚症状や医師の診察により口腔乾燥症が疑われてSSの精査が行われた87名の臨床症状を診療録から抽出した.口腔内乾燥に関連する14の質問ごとに乾燥自覚なしと乾燥自覚ありの2群に分けた.

    結果:SS 49名,非SS 38名との間で14項目すべてにおいて,乾燥自覚なしとありの割合に差がなかった.SS診断における唾液腺エコーの感度と特異度は,Ariji法でそれぞれ70.7%と91.7%,Outcome Measures in Rheumatology Clinical Trials(OMERACT)法で68.3%と91.7%であった.14の質問のうち半分で乾燥自覚あり群は,なし群よりも唾液分泌量が有意に低値であり,耳下腺エコースコアは一部の乾燥自覚(口の中が乾く,長時間話しづらい,口の中が痛い)と関係があった.

    結論:多様な自覚症状のうち,他覚所見異常を反映する特有な自覚症状が存在した.

  • 吉井 一郎
    2023 年 35 巻 1 号 p. 22-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    【目的】治療抵抗性前段階の関節リウマチ(pre-D2T RA)患者における失敗の危険因子を特定し予防策を見出すことである.

    【方法】Treat-to-target治療戦略を受けたRA患者を抽出した.D2T RAのEULAR定義に従って治療困難状態を判定し,D2T RA以前の状態を以下のように判定した.カテゴリー1(1種類の生物学的製剤またはJAK阻害剤の失敗により2剤目の作用の違う薬剤を投与)かつ2(中等度の疾患活動性,グルココルチコイド投与量がプレドニゾロン相当量で7.5mg以上,X線像での急速な進行,または生活の質スコアが半年で低下)と定義し,治療中に一致する患者を集め最初に一致した時をbaselineとした.結果は1年以上経過した時点での最終観察で決定した.患者が各カテゴリーから脱したら“success”,継続なら”failure”と判断した.患者背景における“failure”の危険因子と治療における観察項目をカテゴリーごとに評価した.対象群としてカテゴリー2に合致する患者も抽出し,危険因子などを検討した.

    【結果】Pre-D2T RA患者47名と対象群の患者444名が対象となった.Pre-D2T RA患者では,有意な危険因子はsimplified disease activity score(SDAI)の高値と治療中の新たな糖質コルチコイド製剤(GCS)の処方であった(p < 0.05).対象群で有意な危険因子は治療期間を通じたmethotrexateの非処方とフォロー中のSDAIを含めた疾患のコントロールであった.

    【結論】D2T RAの予防に最も重要な因子は厳格な疾患活動性制御であった.Pre-D2T RAにおけるGCS処方は避けるべきである.

  • 東 直人, 松井 聖
    2023 年 35 巻 1 号 p. 35-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    【目的】ドライマウス患者では唾液中重炭酸塩(HCO3)濃度の低下に伴い唾液緩衝能と口腔内pHが低下する.これはう蝕,カンジダ症と関連する.重曹うがいは唾液緩衝能を補うと考えられ,シェーグレン症候群(SS)患者における有用性を調査する.

    【対象・方法】重曹うがいを行なったSS患者27人で重曹うがいの実施状況や使用感,ドライマウスに関する症状の変化を問診で調査した.薬物治療や日常の対策は従来通り継続した.

    【結果】実施回数は1日2回が最も多く(33.3%),実施場面は就寝前(66.7%),食後(63.0%)が多かった.使用感は「とても良い」または「良い」が74.1%,ドライマウス症状が軽減した者が66.7%と多かった.良かった点として「口の中がスッキリする」が最も多く(51.9%),「ネバつきが軽くなる」(29.6%),「手軽に作れる」(25.9%),「安価」(22.2%)が続いた.「舌の荒れ/口角炎/口内炎が少なくなった」という回答もあった(14.8%).悪かった点は「面倒」が最も多く(37.0%),「味」(22.2%)が続いたが,「特になし」も比較的多かった(25.9%).使用中重篤な有害事象はなく,「今後もしようと思う」が74.1%と多かった.

    【結論】重曹うがいはSS患者のドライマウス症状を軽減し,簡便性と安全性も高く,SS患者のセルフケア法として活用できると考える.

  • 本田 ひとみ, 佐久間 あゆ美, 小野 希里子, 石川 肇, 松井 弥咲, 酒井 禎子, 永吉 雅人
    2023 年 35 巻 1 号 p. 44-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/07/07
    ジャーナル フリー

    目的:関節リウマチ(RA)患者の手洗い状況を調査し,洗い残しに関連する要因を分析し,手洗い指導について検討する.

    対象・方法:2021年7月から同年11月に当院入院中のRA患者55人(年齢69.7歳,男性8人,女性47人)を対象に,手洗いに関する質問紙調査及び手洗いチェッカーを用いた洗い残し調査を行い,手洗い状況,洗い残しに関連する患者の背景を調査した.

    結果:手の洗い残し部位は,左右とも手背側の指間部で洗い残し(87%)が最も多く,次いで爪周囲(77%)が多い結果となった.洗い残しに関連する要因として,同居家族の有無と手の変形部位の数に有意性が認められた.両手の洗い残しスコアと年齢,罹患期間,生物学的製剤使用の有無,指導の有無,両手の握力,手のこわばり,Health Assessment Questionnaire(HAQ),Visual Analogue scale(VAS)を用いた肩・肘・手の疼痛評価との間には有意差はなかった.

    結論:一人暮らしで手に変形があるRA患者に対して,作業療法士と協働して感染予防のための正しい手洗い手技の教育を進めていくことが必要であると考えられた.

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