臨床リウマチ
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トファシチニブ
山岡 邦宏
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2023 年 35 巻 3 号 p. 139-145

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抄録

 トファシチニブは経口内服薬として初めて生物学的製剤と同等の有効性を示した一方で,HZの増加や安全性面でTNF阻害薬との非劣性を示せないことをJAK阻害薬として初めて明らかにした.ORAL Surveillance試験(OS試験)は,IL-6阻害薬が安全性においてTNF阻害薬との非劣性を証明する目的に行ったENTRACTE試験の最中に開始された.いずれも脂質異常症を誘発する薬剤であり,臨床試験や臨床研究の中で心血管事象を増加させないことは示されていたが,TNF阻害薬との比較により新たな手法での安全性証明が試みられた.IL-6阻害薬では非劣性が証明され,JAK阻害薬では証明されなかった.注意すべきは,対照群で使用されたTNF阻害薬は,実臨床で経験豊富な薬剤として用いられており,安全な薬剤の指標ではない点である.欧米では心血管事象に対する注目度が高いが,OS試験で最も重要な結果は,疾患活動性とリスクの高いRA患者に通常用量または過剰用量のトファシチニブを投与すると悪性腫瘍が増加するという点である.最近の本邦からの報告では,生物学的製剤導入時にCTでスクリーニングを行った患者群では単純レントゲン写真で行った場合と比較して死亡率が10分の1まで抑制されていた.このことは,欧米先進国と比較して人口密度が高く,広範にCT普及がしている本邦独自の安全性を向上させた分子標的治療の可能性を物語っている.帯状疱疹に対してはサブユニットワクチンが普及しており,患者負担を考慮しつつ接種を進める工夫が必要である.

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© 2023 一般社団法人日本臨床リウマチ学会
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