2024 年 36 巻 3 号 p. 213-221
【目的】サリルマブ(SAR)は関節リウマチに対する2剤目のIL-6阻害薬である.今回単施設におけるSARの継続率と効果不十分中止,有害事象中止に関与する因子について検討した
【方法】2018年から2022年までに当院にてSARによる治療を開始された症例を対象とした.薬剤継続率はKaplan-Meyer法,競合する各イベント(効果不十分中止,有害事象中止)の累積発生率に関与する因子の群間比較はGray検定を用いた.多変量Fine-Gray比例ハザード回帰分析を実施し,従属変数としての累積発生率と,リスク因子とみなされた独立変数との関連性を評価した.
【結果】対象は87例.女性76.5%,開始時の平均年齢は65.5歳,平均罹病期間11.6年,RF,ACPAの陽性率はそれぞれ74.7%,70.9%であった.またBMIが30kg/m2以上の肥満症例が10例,11.5%であった.b/tsDMARDの使用歴があったのは,59例・67.8%,開始時のCDAIの平均は21.7であった.治療開始時のMTXおよびPSLの併用率・併用量はそれぞれ,61.6%・8.1mg/週,37.9%・5.2mg/日であった.治療開始1年での薬剤継続率は75.0%,同期間での効果不十分中止・有害事象中止はそれぞれ15.9%,12.0%であった.効果不十分中止に関与する因子としてBMI≧30kg/m2が多変量解析の結果抽出され,オッズ比 3.84,95%信頼区間 1.29-12.2であった.有害事象中止の最多は皮膚障害(31.3%)であり,多変量解析で有意な因子は抽出されなかった.
【結論】SARの効果不十分中止に関与する因子としてBMI 30kg/m2以上の肥満が抽出された.高度の肥満はSARの効果に制限をもたらす可能性が示唆された.