抄録
平成17年度から平成20年度までの間に東北大学で実施した化学物質の作業環境測定結果、及び測定時の作業状況・室内環境について第2・第3管理区分と評価された実験室の分析を中心に検討し、大学研究室の環境衛生の現状及び問題点について考察した。本学における作業環境測定結果において、第2・第3管理区分になる事例は例年1~2%程度と、ごく僅かであるが、有機溶剤では、キシレン、クロロホルム、ノルマルヘキサンなど揮発性の高い物質で間欠的な瞬時曝露が問題となって第2・第3管理区分なるケースが認められた。しかし、これらの作業の多くは局所排気装置外で行われており、作業場を局所排気装置下に変更することで良好な作業環境へと改善した。特定化学物質では、ホルムアルデヒドを扱う作業場で第2・第3管理区分となるケースが多く認められたが、解剖学実習室や病理標本を取り扱う作業など、排気設備の大規模な改善を要する事例が多かった。また、いくつかの事例では、薬品瓶や廃液タンクの蓋の開放など測定結果に影響を及ぼす実験室内での環境衛生上の問題を併せて指摘された。
今回の検討では、大学実験室の作業環境の良悪は教員や学生の“作業管理”水準に依存する部分が大きいと考えられたため、教員や学生を対象に環境安全衛生に関する教育を継続的に実施し、研究室ごとの自主的なリスクアセスメントに基づいた環境衛生管理を展開できる様に啓発してゆくことが重要であると思われた。