2006 年 21 巻 1 号 p. 18-23
がんの生物学の発展により発がん・悪性化に関わるさまざまな遺伝子産物が解明されつつある. これに伴い抗がん剤の分子標的をあらかじめ選定したうえで薬を開発すること, すなわち分子標的治療薬の開発が可能となった. 分子標的治療薬は, がんのアキレス腱といえるような特徴的分子を狙おうとするもので, がんへの選択毒性が高く, したがって副作用が低いことが期待される. チロシンキナーゼ阻害剤に端を発した分子標的薬剤の開発は, ハーセプチン, グリベックなどの成功によりその方向性に間違いのないことが実証された. 分子標的治療薬の実用化によりがんの薬物療法は新たな時代を迎えた.
本稿では, 近年承認された, あるいは現在開発中の分子標的治療薬について概観する.