Drug Delivery System
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21 巻, 1 号
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特集 “がんの分子標的治療” 編集 : 山口俊晴
  • 矢守 隆夫
    2006 年 21 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    がんの生物学の発展により発がん・悪性化に関わるさまざまな遺伝子産物が解明されつつある. これに伴い抗がん剤の分子標的をあらかじめ選定したうえで薬を開発すること, すなわち分子標的治療薬の開発が可能となった. 分子標的治療薬は, がんのアキレス腱といえるような特徴的分子を狙おうとするもので, がんへの選択毒性が高く, したがって副作用が低いことが期待される. チロシンキナーゼ阻害剤に端を発した分子標的薬剤の開発は, ハーセプチン, グリベックなどの成功によりその方向性に間違いのないことが実証された. 分子標的治療薬の実用化によりがんの薬物療法は新たな時代を迎えた.
    本稿では, 近年承認された, あるいは現在開発中の分子標的治療薬について概観する.
  • 清宮 啓之
    2006 年 21 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    染色体末端におけるテロメアの短縮は, DNA損傷応答を惹起して細胞老化を誘導することから, 発がん予防の一翼を担うと考えられている. がん細胞の無限増殖性はテロメラーゼによるテロメア長の維持に依存しているため, テロメラーゼ阻害剤は新たながん分子標的治療薬となりうる. テロメラーゼのテロメア会合を促進すると考えられるタンキラーゼ1もまた, 有望なテロメア分子標的である. テロメラーゼ阻害剤の制がん効果はテロメアの短縮に依存すると考えられてきたが, 最近ではテロメア非依存的な作用メカニズムの存在も示唆されている.
  • 吉田 稔
    2006 年 21 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    ヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) は, クロマチンの構造と機能を制御する酵素として化学遺伝学的に発見された. HDACは発がんや腫瘍血管新生に関与し, その阻害剤はがん細胞に細胞周期停止, 分化, アポトーシスなどを誘導することから, 近年, がんの分子標的としての重要性が大変注目されている.
    本稿では, HDAC阻害剤に関する化学と生物学について, 最近の進歩と今後の展望について述べたい.
  • 西山 伸宏, 片岡 一則
    2006 年 21 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    ドラッグデリバリーシステム (DDS) による標的治療は, 薬剤の体内動態を制御し, 患部選択的に薬剤を集積させることで, 治療効果の向上と副作用の軽減を達成することを目的としているが, 近年, その細胞レベルでの効果についても注目されるようになってきた. すなわち, 薬剤キャリアの利用は, 標的局所における薬物の細胞内動態 (取り込み過程, 細胞内局在, 細胞内での薬剤の放出パターン) に変化をもたらし, 薬剤の薬理作用に影響を与えると考えられる.
    本稿では, そのようなDDSの細胞レベルでの作用メカニズムに関して, 遺伝子発現評価を中心とした最近の研究について紹介する.
  • ―Small interfering RNAを用いた膀胱内注入療法を目指して―
    湯浅 健, 土谷 順彦
    2006 年 21 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    膀胱がんは膀胱という閉鎖腔において発生し進行していくがんであり, 経尿道的に体外から比較的容易に到達可能である. 現在, 表在がんの治療としては経尿道的切除後にBCGや抗がん剤の注入療法が行われており, 治療のストラテジー上特殊ながんといえる. すなわち“局所へ高濃度の薬剤を貯留させることにより, 一定時間がん細胞と接触させる”ことが可能であり, 治療後の薬剤の回収もきわめて容易である. 世界中でさまざまな新規の抗がん剤や, ウイルスベクターを用いた遺伝子治療の前臨床試験や臨床試験が行われている.
    本稿では, 表在性膀胱がんに対する膀胱内注入療法として注目される最近の知見に加えて, 筆者らが目指している核酸医薬を用いた膀胱がんに対する新しい治療法の開発の一端を紹介したい.
  • 水沼 信之
    2006 年 21 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    近年, がん化学療法は大きな進歩を遂げている. 既存の細胞毒性を持つ抗悪性腫瘍薬とまったく概念の違う分子標的治療薬が続々と認可され, 治療成績が向上している. 分子生物学の急速な進歩で, がん細胞の無制限な増殖・浸潤・転移といった生物学的特徴と関連を持つ遺伝子, 蛋白について解明が進んできた. 分子標的治療薬はこれらを標的として設計されている. 製剤的には分子量や分子構造の明確な小分子物質 (small molecule) と, モノクローナル抗体などの高分子 (macromolecule) に分類される.
    Bevacizumabは, 最初に認可された血管新生阻害剤でFL療法, IFL療法, FOLFOX療法と組み合わされ最大奏効率61%と抗腫瘍効果の増強と生存期間の延長を認めた. またcetuximabもCPT, FOLFOXなどとの併用で抗腫瘍効果の改善を認めている. これら分子標的薬剤は, 新時代のがん治療の主役となると考えられる.
  • 武田 真幸, 西尾 和人
    2006 年 21 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/18
    ジャーナル フリー
    ゲフィチニブは選択的チロシンキナーゼ阻害剤であり, EGFRシグナルを遮断し抗腫瘍効果を発揮する. いくつかの第III相臨床試験では治療延命効果を示すことが出来なかったが, EGFR遺伝子変異はゲフィチニブ奏効率と関連していた.
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