抄録
ナノメートルサイズの物質は、バルク物質が有する特性とは、化学的、物理的、または生物学的に区別しうる特性をしばしば有し、このような特異な性質は、医薬品開発にも応用されつつある。ナノテクノロジーを基盤とした医薬品(ナノ医薬品)は、従来の製剤とは体内での挙動や生体との相互作用などさまざまな点で異なると考えられるため、ナノ医薬品の特性に配慮した評価が必要とされている。筆者らは、主として有効成分の生体内安定性や生体内分布等の体内動態の制御による薬効の向上と毒性低減等を目的とした脂質ナノ粒子並びに高分子ミセルの製剤化研究や非臨床、臨床試験を行っている。本稿では、筆者らが取り組んでいるナノ医薬品のレギュラトリーサイエンス研究について紹介する。