2015 年 30 巻 4 号 p. 286-298
虚血性心疾患に対するカテーテル治療(Percutaneous coronary intervention: PCI)として1980年代当初に脚光を浴びたballoon angioplastyは、低侵襲であるが急性冠動脈閉塞、再狭窄といった課題があった。1986年に冠動脈ステントが登場することでPCIの成績は飛躍的に向上し、バイパス手術とほぼ肩を並べるまでになった。一方で、血管平滑筋細胞の増殖を主因とするステント再狭窄からは逃れることができず、長期成績は依然バイパス術に敵わなかった。世界初の薬剤溶出型ステント(Drug Eluting Stent:DES)であるサイファーステントの臨床応用が1999年に開始され、その後すばらしい長期臨床成績を示した。DESは金属ステント(Platform)、新生内膜増殖を抑制する薬剤(Drug)、薬剤の溶出を制御するコーティング(Polymer)の3つの構成要素からなる。現在のDESはそれぞれの要素を発展させ、さらにこれらの組み合わせを変えることで進歩を遂げてきた。DESの進化の歴史はPCIの発展の歴史といっても過言ではない。