抄録
冠動脈疾患、特に急性心筋梗塞は急性期死亡率の高さと慢性期の心不全の原因になることから、その予防および治療の改善はわが国の医学の重要な課題である。急性心筋梗塞で問題となる病態は、冠動脈における動脈硬化性プラークの不安定化と破綻であり、一方、発症した急性心筋梗塞における問題は、早期再灌流療法による心筋梗塞縮小効果を妨げる心筋虚血再灌流傷害である。これらの病態に対する薬物療法はun-met medical needsであり、筆者らはナノ粒子を応用したドラッグデリバリーシステムの応用により、冠動脈疾患を含む心血管病におけるナノ医療の実現を目指している。本稿ではその背景およびモデル動物における前臨床試験の成果を紹介する。