抄録
脳血管障害は本邦において要介護にいたる原因の第1位であり、その約6割を占める脳梗塞は世界的にも克服が望まれる疾患の1つであるが、血栓溶解剤である組織プラスミノーゲン活性化因子を除き、いまだ世界基準の治療薬は創出されていない。筆者らは、脳梗塞後に生じる血液脳関門の透過性亢進に着目し、脳虚血時あるいは再灌流後の早期からリポソームによる虚血部位への薬剤送達が可能であることを示してきた。さらに、脳保護薬搭載リポソームを開発し、ラット脳梗塞モデルにおいてリポソームDDSが新規脳梗塞治療法として有用であることを明らかとしてきた。本稿では、リポソームDDSを応用した脳梗塞治療について、筆者らが見出した最近の知見を紹介する。