抄録
筆者は12年前の日本薬学会年会シンポジウムにおいて核酸・遺伝子医薬品の当時の現状を紹介した。遺伝子治療用リポソーム等で用いられるプラスミドDNAと比べて、siRNAに代表される核酸医薬の方が化学修飾、細胞内導入、安定性などの観点からも優位であり、企業の開発は今後、核酸医薬品にシフトしていくだろうと予測した。それから12年経過した現在の状況を見て、その予測が見事にはずれたことに驚いている。核酸医薬は予想どおり、アンチセンス医薬、siRNA医薬等が徐々に上市され始めたが、ウイルスベクターを用いた遺伝子治療用医薬品も5年間で7品目が上市されている状況である。核酸医薬品も修飾核酸が多く、いずれにおいてもまだDDS(drug delivery system)技術の貢献度は低いようであるが、有効性と安全性のさらなる向上のために、近い将来DDS技術が必要になるのは間違いない。最近注目されているエクソソームは、その突破口になる可能性が高いと思われる。