2019 年 34 巻 2 号 p. 99-105
1990年に米国にて、アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症に対して世界で最初の遺伝子治療が実施されてから、25年以上が経過した。この間、素晴らしい治療効果が観察された臨床例もあったが、期待されたほどの治療効果が得られた例は限られており、また重篤な副作用も報告されたことから、遺伝子治療は冬の時代を迎えた。しかし、その後の研究者の絶え間ない努力により、2012年のリポタンパクリパーゼ発現アデノ随伴ウイルスベクター(商品名Glybera)の承認を皮切りに、7種の遺伝子治療薬が相次いで承認され、いよいよ遺伝子治療は現実のものとなってきた。そこで本稿では、ウイルスを基盤とした遺伝子治療薬の開発の現状ならびに今後の展望について紹介する。