抄録
さまざまなナノ粒子を用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)の発展により、薬効の向上や副作用の低減を実現させてきた。近年、薬剤を送達するという従来型のDDSではなく、酵素などにより物質を変換する機能を有するナノデバイスを患部に送達し、疾患部位で薬剤をつくり出したり、不要な分子を除去して治療を行う概念(DDSナノファクトリー)が注目されつつある。本稿では、このDDSナノファクトリーの特徴と設計指針について言及した後に、筆者らが開発した糖鎖高分子ベシクルの特性と機能、そしてDDSナノファクトリーとしての応用に関して概説する。