2019 年 34 巻 3 号 p. 163-172
免疫療法の発展のために、免疫担当細胞に抗原を運搬すると同時に活性化し、抗原特異的な細胞性免疫を誘導できる抗原キャリアが求められている。筆者らは、弱酸性pHに応答して膜融合性を発現する機能性高分子を抗原封入リポソームに修飾することで、細胞性免疫を効果的に誘導できる抗原キャリアを開発した。pH応答性高分子修飾リポソームは樹状細胞に効果的に取り込まれ、エンドソームの弱酸性pHに応答して膜融合性となりサイトゾルに抗原を運搬することで、抗原特異的な細胞性免疫を誘導した。さらに、アジュバント分子の組み込みや、生理活性多糖を基盤としたpH応答性高分子の利用により、担がんマウスにおいて強力な抗腫瘍免疫の誘導に成功した。