日本農村医学会雑誌
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原著
農福連携の実施主体が実践行為から中間支援へ移行したプロセスの分析
─阿南町社会福祉協議会が限界集落で取り組んだケースから─
合田 盛人
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2022 年 71 巻 4 号 p. 321-331

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抄録

 本研究では,阿南町社会福祉協議会(阿南町社協)が取り組んだ農福連携を調査分析することにより,農福連携の実施主体が実践行為から中間支援へ移行するプロセスを単一事例修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(SCM-GTA)を活用して明らかにすることを試みた。その結果,14の概念と4つのカテゴリーが生成され,結果図を作成した。さらに,概念とカテゴリーを用いて次のように文章化(ストーリーライン)した。阿南町社協が限界集落を対象に展開した農福連携は,まず<限界集落への訪問>など【限界集落の地域アセスメント】から始めて,集落住民へ【在宅生活存続のための農業支援】を開始,その後<農業支援事業の終了>と同時に<社協運営施設での農業実践>により【在宅高齢者への生活支援から障害者への就労支援へ】と転換し,さらに<障害者福祉施設と伝統野菜とのマッチング>を行ない<障害者と地域住民と社会資源の協働>による【地域共生社会の実現】に向けた取組となった。阿南町社協が実施した農福連携は,限界集落における地域自立生活支援であり,「福祉の地域力」を駆使して,「地域の福祉力」を高めており,その2つの合力である「地域福祉の推進力」を創出しており,その合力の先端には,限界集落において規模は小さくとも地域共生社会を実現していることが示唆された。

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© 2022 一般社団法人 日本農村医学会
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