Drug Delivery System
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特集 “細胞外小胞が拓く創薬・診断技術の最前線”  編集:秋田英万
細胞外小胞の1粒子分析・層別化技術
一木 隆範
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2021 年 36 巻 2 号 p. 117-123

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抄録

近年、エクソソームを利用した新たな診断、治療技術の誕生への期待が高まっている。一方で、直径が数10~100 nmで不均質な粒子集団の計測や操作は容易でなく、エクソソーム医療の信頼性や安全性、標準化を支えうる基盤技術の構築が求められている。例えば、ナノ粒子のサイズ測定では動的光散乱法が広く用いられているが、これは個々の粒子を測定するのではなく、粒子集団にレーザー光を照射し、粒子のブラウン運動に起因して生じる散乱光強度の時間的揺らぎ変動の自己相関関数を測定し、その解析により粒子径の分布を取得する。しかし一般に、このように信号の総和を一度取得した後で数学的に分離を行う手法では、試料の多分散性が増すほど計測結果の信頼性が損なわれる。1粒子計測はこのような問題を回避できるが、直径数10 nmの微小粒子を検出・操作する技術面での難易度が高く、新たなブレークスルーが求められている。そこで、筆者らはマイクロ流体デバイスやアレイチップ等のバイオデバイス技術を応用し、エクソソームの1粒子計測を可能にするプラットフォーム技術の開発を行ってきた。本稿では、ゼータ電位計測用電気泳動チップ、ナノ粒子分離デバイス、エクソソームアレイチップ等の最近の開発事例を紹介するとともに、エクソソームの評価、分離技術の開発動向と将来展望について論じる。

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© 2021 日本DDS学会
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