抄録
DNAのオリゴヌクレオチドへの解離(変性)を示差走査熱量計(DSC)で、逆方向のオリゴヌクレオチドの結合を等温滴定熱量計(ITC)で、いずれも熱力学的に解析し、塩基鎖長や溶液のイオン強度が与える影響を評価した。DSC解析の結果、塩基鎖長依存的に変性温度、エンタルピー変化量ともに増大した。一方、ITC解析の結果、塩基鎖長依存的に結合エンタルピー変化量は負に増大するも、結合エントロピー変化量が補償することで、平衡結合定数Kaは最大で108 M–1程度であった。またイオン強度上昇に伴い、DNAの負電荷反発の低減により、変性温度が上昇した。DNAとタンパク質との結合や安定性においても、静電反発の効果が認められた。