抄録
経口投与された製剤からの薬物吸収に、個体間差や個体内差が起きる要因の一部は、消化管生理の変動と患者集団の違いが、薬物および製剤特性に及ぼす影響が異なることに由来する。特に、消化管生理の変動のなかでも、消化管内pHと胃内容排出速度による影響が大きく、食事の有無による胆汁分泌の違いが、さらに変動を複雑化している。患者個々の年齢、疾病、薬物併用、食前・食後等に由来する消化管生理の変動を反映させた製剤評価手法を開発することで、消化管内の現象に起因する薬物吸収の個体間差・個体内差が小さい製剤開発へとつながり、さらには、製剤が患者個別に処方設計・製造される時代を支える評価技術となることを期待している。