Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
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ISSN-L : 0913-5006
37 巻, 4 号
日本DDS学会
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
FOREWORD
OPINION
特集 “個別化医療推進のための経口デリバリーとは”  編集:高木敏英
  • 原田 努
    2022 年 37 巻 4 号 p. 284-293
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    個別化医療では比較的少数のさまざまな患者集団のニーズに対して、開発のはじめから正確に低コストで応えることが求められる。小児および高齢者が服用しやすい製剤は、臨床の調剤に依るところが大きい実情を考えると、新薬開発の設計時に製剤が粉砕され、懸濁され、経管投与されることを想定したユニバーサルデザイン製剤にする必要がある。OD錠はそれに近い特性であるが、嚥下困難のある高齢者が服薬に使用するとろみ水とは相互作用があり、小児は口腔内で味を呈する製剤を嫌がるので注意が必要である。これに対してミニタブレットは、乳幼児でも服用できることを臨床試験で検討したので、小児用製剤として今後期待できると考えられる。
  • 田上 辰秋, 小川 昂輝, 尾関 哲也
    2022 年 37 巻 4 号 p. 294-302
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    3Dプリンターで製造した錠剤が米国で認可されて以降、3Dプリンティング技術を使用した製剤・医薬品の研究論文数は最近の5年間で急増しており、さまざまな観点から世界中で研究が行われている。本稿では、製剤・医薬品の研究に関連して3Dプリンターの基本的なことをまず解説する。次に3Dプリンターの特徴を活かした医薬品のモデル研究が数多く発表されていることから、最近の論文をピックアップし、幅広く解説を行った。オンデマンド製造、院内製造、小児製剤、複合錠剤と薬物放出制御、異分野技術との融合研究などをトピックスとして取り上げ紹介を行った。
  • 前田 和哉
    2022 年 37 巻 4 号 p. 303-311
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    薬物のヒト消化管吸収予測の課題として、特に代謝酵素・トランスポーター等動的な制御が関わる薬物について、既存の実験系では予測性が低下することが示されていた。そこで筆者らは、ヒトcrypt由来の消化管幹細胞を継代培養し、必要なときに培地の置換のみで培養皿やculture insert上に分化した吸収上皮細胞の単層を形成できることを示した。本実験系では、複数の取り込み・排出トランスポーターや代謝酵素の発現がヒト組織と同等レベルであり、またcrypt採取部位の細胞の遺伝子発現/機能が再現される特徴がある。この性質を利用して、ヒト消化管吸収の定量的予測や、薬物誘導性消化器毒性のリスク評価系としての活用を進めている。
  • 高木 敏英
    2022 年 37 巻 4 号 p. 312-320
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    経口投与された製剤からの薬物吸収に、個体間差や個体内差が起きる要因の一部は、消化管生理の変動と患者集団の違いが、薬物および製剤特性に及ぼす影響が異なることに由来する。特に、消化管生理の変動のなかでも、消化管内pHと胃内容排出速度による影響が大きく、食事の有無による胆汁分泌の違いが、さらに変動を複雑化している。患者個々の年齢、疾病、薬物併用、食前・食後等に由来する消化管生理の変動を反映させた製剤評価手法を開発することで、消化管内の現象に起因する薬物吸収の個体間差・個体内差が小さい製剤開発へとつながり、さらには、製剤が患者個別に処方設計・製造される時代を支える評価技術となることを期待している。
  • 白坂 善之
    2022 年 37 巻 4 号 p. 321-327
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    利便性や安全面で優れる経口薬は、患者QOLの観点で最も好まれる剤形である。経口医薬品の吸収には、製剤の崩壊、原薬の溶解、そして消化管上皮細胞を介した膜透過が含まれる。これらの過程はいずれも投与条件や消化管内生理環境の影響を受けやすく、疾患、飲食、年齢など、さまざまな要因に左右される。経口薬の体内動態に見られる個人間変動の原因は、このような複雑な消化管内生理環境にあると考えられるが、その理解は決して十分なものではない。筆者らの研究グループでは、近年、消化管内の浸透圧環境が水分挙動を変化させ、薬物濃度の変動とそれに伴う吸収変動を引き起こすことを見出してきた。本稿では、患者個別の薬物吸収動態予測を実現するうえで、その基盤として理解すべき消化管内生理環境・機能について、消化管内浸透圧に起因した水分挙動とその薬物吸収への影響に焦点を当てて概説する。
TOPICS
DDS製品開発の最前線
  • 西田 憲晃, 鹿村 悠子, 礒脇 明治
    2022 年 37 巻 4 号 p. 349-353
    発行日: 2022/09/25
    公開日: 2022/12/25
    ジャーナル フリー
    アジマイシン点眼液1%は、アジスロマイシン水和物を有効成分とした日本で唯一のマクロライド系抗生物質点眼液である。アジスロマイシンは良好な組織移行性を示し、酸性pHで安定な特徴をもつ薬物である。また、アジマイシン点眼液1%の製剤技術には、ポリカルボフィル等を配合した眼科用Drug Delivery System技術のDuraSiteが応用されている。ポリカルボフィルは増粘や粘膜接着性により、眼表面の薬物滞留性および眼内への薬物移行性を向上させることができる。薬物特性や製剤技術により他の抗菌点眼液と比較して、少ない点眼回数で眼感染症の治療が可能であり、患者さんのアドヒアランスの向上が期待できる。
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