抄録
中枢神経系に薬物を送達する際、血液脳関門(BBB)が大きな障壁となる。BBBでは、隣接する脳微小血管内皮細胞の隙間を封印する必要があり、この封印するための仕組みとしてタイトジャンクション(TJ)が発達している。TJは複数のタンパク質から構成されているが、なかでもクローディン-5(CLDN-5)は、BBBのTJシール機能に中心的な役割を担っている。ノックアウトマウスでは、約800Daの分子が細胞間隙を介して脳内に移行していたことから、BBBのTJシール制御による脳内薬物送達技術として、CLDN-5バインダーの開発が行われてきた。本稿では、このCLDN-5を標的としたBBB制御技術の臨床応用に向けた有効性および安全性に係る論点を議論したい。