抄録
腫瘍溶解性ウイルス療法は、がん治療において注目されている領域であり、これまでさまざまな腫瘍溶解性ウイルスが臨床試験で評価がなされ、この10年間で3種の腫瘍溶解性ウイルス製剤の薬事承認がなされている。腫瘍溶解性ウイルス療法の利点は、ウイルスが直接腫瘍細胞を破壊するだけでなく、抗腫瘍免疫応答を刺激する点にある。また、課題については、運用面において、ウイルスを治療に用いる点とウイルスを局所に投与する局所治療が主体である点であり、抗腫瘍効果においては、ウイルスの送達と拡散の効率性が限られている点と宿主の免疫系によるウイルスが排除されてしまう点である。これらの課題を克服するためにさまざまな試みが行われている。本稿では、腫瘍溶解性ウイルス療法における発展と課題について紹介したい。