抄録
非増殖型アデノウイルス(Ad)ベクターが1990年代のin vivoがん遺伝子治療の研究を牽引し、2000年代より腫瘍溶解性ウイルス(OV)の制限増殖型Ad(CRA)の開発が本格化し、近年は免疫遺伝子搭載型CRAの研究と臨床応用が盛んである。筆者らは、複雑に遺伝子改変したCRA(多因子増殖制御型CRA;m-CRA)を多種多様・効率的に作製できるプラットフォーム技術を開発し、サバイビン反応性m-CRA(Surv.m-CRA)を創出した。治療遺伝子未搭載のSurv.m-CRA-1は、治療抵抗性の悪性骨腫瘍への早期承認を目指した多施設共同・第Ⅱ相医師主導治験を現在進めている。さらに最近、安全かつ最大の治療効果を得るための、免疫遺伝子搭載OVにおける「至適プロモーターによる至適発現の必要性」という新概念を見出した。本稿ではAdのウイルス学に続いて上記を概説し、次世代CRAの展望について述べる。