Drug Delivery System
Online ISSN : 1881-2732
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ISSN-L : 0913-5006
39 巻, 4 号
日本DDS学会
選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
FOREWORD
OPINION
追悼
特集 “ウイルスを利用したDDS”  編集:川上亘作
  • 菅生 健, 岡田 尚巳
    2024 年39 巻4 号 p. 242-247
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    mRNAワクチンは広く普及したが、温度安定性、アナフィラキシー等、多くの課題がある。ウイルスベクターワクチンは、抗原タンパク質の基になる遺伝情報であるDNAを利用したワクチンであり、安定性に優れる。COVID-19のパンデミックでは、アデノウイルスベクターワクチンが承認されたが、品質上の問題で需要は低迷した。一方、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus:AAV)ベクターは、病原性、免疫原性および細胞傷害性が低く、現在、最もよく研究されている遺伝子治療用ベクターである。本稿では、AAVベクターが、mRNAワクチンのデメリットを補完する新規モダリティとして実用化するための規格の考え方、さらには精製技術および品質の向上に向けた取り組みについて解説する。
  • 小戝 健一郎, 西川路 侑耶, 伊集院 広壮, 松田 恵理子, 三井 薫
    2024 年39 巻4 号 p. 248-259
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    非増殖型アデノウイルス(Ad)ベクターが1990年代のin vivoがん遺伝子治療の研究を牽引し、2000年代より腫瘍溶解性ウイルス(OV)の制限増殖型Ad(CRA)の開発が本格化し、近年は免疫遺伝子搭載型CRAの研究と臨床応用が盛んである。筆者らは、複雑に遺伝子改変したCRA(多因子増殖制御型CRA;m-CRA)を多種多様・効率的に作製できるプラットフォーム技術を開発し、サバイビン反応性m-CRA(Surv.m-CRA)を創出した。治療遺伝子未搭載のSurv.m-CRA-1は、治療抵抗性の悪性骨腫瘍への早期承認を目指した多施設共同・第Ⅱ相医師主導治験を現在進めている。さらに最近、安全かつ最大の治療効果を得るための、免疫遺伝子搭載OVにおける「至適プロモーターによる至適発現の必要性」という新概念を見出した。本稿ではAdのウイルス学に続いて上記を概説し、次世代CRAの展望について述べる。
  • 小島 隆嗣
    2024 年39 巻4 号 p. 260-266
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    腫瘍溶解性ウイルス療法は、がん治療において注目されている領域であり、これまでさまざまな腫瘍溶解性ウイルスが臨床試験で評価がなされ、この10年間で3種の腫瘍溶解性ウイルス製剤の薬事承認がなされている。腫瘍溶解性ウイルス療法の利点は、ウイルスが直接腫瘍細胞を破壊するだけでなく、抗腫瘍免疫応答を刺激する点にある。また、課題については、運用面において、ウイルスを治療に用いる点とウイルスを局所に投与する局所治療が主体である点であり、抗腫瘍効果においては、ウイルスの送達と拡散の効率性が限られている点と宿主の免疫系によるウイルスが排除されてしまう点である。これらの課題を克服するためにさまざまな試みが行われている。本稿では、腫瘍溶解性ウイルス療法における発展と課題について紹介したい。
  • 内田 直也
    2024 年39 巻4 号 p. 267-274
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    造血幹細胞(HSC)に対する遺伝子治療は、さまざまな遺伝性疾患の根治治療として期待されている。HSCは生涯を通じて血液を産生するため、HSCの病原性変異をDNAレベルで修復することにより、1回の治療で長期にわたり治療効果を発揮することができる。患者HSCに対する遺伝子治療は、レンチウイルスベクターを使用した遺伝子付加および遺伝子編集にて開発されており、ドナーを必要としないため、ほとんどの患者に適応できる。Ex vivo HSC遺伝子付加・編集治療の有効性は近年の臨床試験で証明されつつあるが、体外でHSCを遺伝子改変するため、体外培養の煩雑さや高額な費用により、遺伝子治療が広まる妨げとなっている。そのため、遺伝子治療ツールを全身投与することで骨髄HSCに遺伝子導入が可能なin vivo HSC遺伝子治療の開発が望まれている。
  • 丹羽 貴子, 宮地 一樹
    2024 年39 巻4 号 p. 275-281
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    核酸脂質ナノ粒子LNP-mRNAは、新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンとして承認された新しいモダリティである。非修飾核酸で構成されたmRNAは炎症反応を誘導するため、生体に投与した場合、過剰な炎症反応による副反応の原因となってしまう。修飾核酸で構成されたmRNAを用いることにより過剰な炎症反応を軽減できることが発見され、mRNAの医薬品への応用の可能性が広がった。一方、LNPに用いられているpH応答性脂質にも自然免疫活性に伴うアジュバント活性があることが明らかとなってきている。本稿では、LNP-mRNAと自然免疫作用について概説する。
  • 三ヶ島 史人
    2024 年39 巻4 号 p. 282-288
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/12/25
    ジャーナル フリー
    遺伝子治療用製品としてのウイルスベクター製品について、品質、非臨床有効性、非臨床安全性、非臨床生体内分布、臨床の評価並びにカルタヘナ法対応の観点から考慮すべき事項をまとめた。また、評価にあたっての留意点として非臨床試験の実施時期や信頼性、用いる被験物質の品質の一貫性についてまとめた。ウイルスベクター製品開発にあたっては品目や疾患の特性に応じて品質・非臨床・臨床評価方法を検討する必要があることから、PMDAの相談業務を活用して製品開発を効率的に進められたい。
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