抄録
リンは生体を構成する六大元素の一つであり、さまざまな生体分子に含まれている。本稿では代表的なリン含有生体分子であるリン脂質と核酸の構造から着想を得た2種類のポリマーを利用して薬物キャリアを設計する試みについて紹介する。中性のリン脂質に倣い合成されたMPCポリマーが非特異的なタンパク質吸着を抑制することはよく知られている。この特徴がステルス性に優れた薬物キャリアを創出するために有効に機能する。さらに、MPCポリマーは広範な脂溶性薬剤を可溶化できる点においても優れている。一方、核酸に倣ったポリリン酸エステル(PPE)は新たな分解性ポリマーバイオマテリアルとして注目されている。多彩な分子設計を許容するPPEを利用した骨ターゲティングや経皮吸収薬物輸送について、筆者らの研究成果を交えながら紹介する。