抄録
ポリビニルピロリドン(PVP)は抗血栓性ポリマーとして人工腎臓などに使用されている。PVPの抗血栓性に影響を及ぼす要因を検討し、さらにPVPよりも抗血栓性の高い新規ポリマーの開発を行った。新規ポリマーにおいては、ポリマー周囲の水(吸着水)の運動性がタンパク質周囲の水の運動性と近い場合に血小板が付着しにくいことを見出した。新規ポリマーは水中でPVPよりも膨潤しており、中性子準弾性散乱測定から新規ポリマー周囲の水和の拘束が緩和され、運動空間が大きくなっていることが示された。当該ポリマーについては人工腎臓などの医療材料に展開しており、その状況についても紹介する。