2026 年 41 巻 2 号 p. 96-105
近年、細胞内外の特定タンパク質を選択的に除去する標的タンパク質分解(TPD:Targeted Protein Degradation)を応用した創薬研究が大きな注目を集めている。TPDを誘導する化合物は、細胞に内在するプロテアソーム経路やリソソーム経路における多様な分解機構を利用する。なかでも、PROTACⓇ (Proteolysis Targeting Chimera)に代表されるキメラ型の分解誘導剤の臨床応用がこの数年で急速に進展し、社会実装の段階に近づきつつある。一方で、これらの臨床開発の過程において、実用化の観点では物理化学的性質に基づく薬物動態などの共通の課題が明らかになってきた。本稿では、TPDの概要とキメラ型の分解誘導剤の臨床試験の現状を概説し、これまでに浮かび上がってきた課題と、それらの克服に向けた今後の展望について論じる。