Drug Delivery System
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耐性克服とDDS
リポソームを用いた細胞内デリバリー—ボロン中性子捕捉療法を目的としたトランスフェリン修飾PEGリポソームの開発—
丸山 一雄
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2005 年 20 巻 1 号 p. 35-41

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抄録

ボロン中性子捕捉療法(boron neutron capturet therapy, BNCT)では, ボロンの安定同位体である10B原子に熱中性子を照射し, 核反応により生じるヘリウム原子核(α粒子), リチウムイオンの重荷電粒子による殺細胞効果を利用している. これらの粒子の飛程は, 約10μmとほぼ細胞1個分程度であるため, がん細胞内に10B原子を局在させることが出来れば, 1個のがん細胞を選択的に殺傷させることが可能となる. つまり, 効果的なBNCTを達成するには, 10B原子をがん細胞の近傍, さらには細胞内へと送達することが重要である. しかも, BNCTを有効に行うための10Bのがん組織内有効濃度は, 20∼30μg/g tumorと高い濃度が要求されている. BSH封入TF-PEG-リポソームは, colon26胆がんマウスに対して, 血中滞留性と固形腫瘍部位への高い10B集積特性を示した. 高い10B集積量は投与後72時間つづき, これは固形がん組織に移行したTF-PEG-リポソームが, TFレセプターを介した、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれた結果であった. 投与後72時間の血中10B濃度は低く, ここで中性子照射を行ったところ, がんの成長抑制と縮小が観測された. TF-PEG-リポソームは, がん細胞内にまで10Bを送達可能とするBNCTに有用なキャリアといえる.

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