日本皮膚科学会雑誌
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糖尿病患者皮膚における角質細胞面積の増大
矢島 ゆかり末木 博彦藤澤 龍一
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1991 年 101 巻 2 号 p. 129-

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抄録

糖尿病患者皮膚においては暦年齢に比し,角質細胞面積の増大,角層turnoverの遅延が認められ,暦年齢に比し老化の亢進した状態にある可能性を検討することを目的とした.各年代の糖尿病患者50名,各年代の健常人43名を無作為に抽出した.角質細胞は,下腿伸側皮膚表面よりTriton X-100リン酸緩衝液に浮遊させて採取し,methylen blue,rhodamine Bにて染色後,1名につき27±3個の角質細胞面積を測定し平均値±標準誤差値を算出した.次に糖尿病群,control群より無作為に各々7例を抽出し,採取された角質細胞数を測定し,何層分の角質細胞が採取されたかを算出し,両群を比較した.control群においては,暦年齢と角質細胞面積との間に有意の相関関係が認められたのに対し,糖尿病群においては,暦年齢と角質細胞面積との間に有意の相関関係が認められなかった.角質細胞面積は,control群に比し,糖尿病群で大きく,30,60,70歳代では統計学的有意差が認められた.糖尿病の重症度,治療法,糖尿病に伴う皮膚病変それぞれと,角質細胞面積との間には,いずれも有意の相関関係は認められなかった.採取された角質細胞数は,control群2.21±0.47×105個,糖尿病群2.49±0.55×105個であり,両群間に有意差は認められなかった.以上の結果より糖尿病患者下腿皮膚における角質細胞面積は同じ暦年齢の健常人のそれに比し,有意の増大傾向が認められ,角層turnoverが遅延しているものと考えられた.

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© 1991 日本皮膚科学会
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