日本皮膚科学会雑誌
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全身性エリテマトーデス(SLE)及びその類縁疾患における凍瘡の既往についての検討
盛岡 奈緒子土田 哲也上田 純嗣石橋 康正
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1991 年 101 巻 6 号 p. 615-

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抄録

平成元年6月~8月までに東京大学附属病院皮膚科エリテマ外来を受診した全身性エリテマトーデス(SLE)及びその類縁疾患患者47例を対象に凍瘡の既往に関するアンケートを施行し,コントロール群141例と比較検討した.SLE群の中で「凍瘡を生じやすかった」という既往歴を有する患者の占める比率(40.0%)及び凍瘡の初発年齢(平均10.8歳)については,コントロール群(28.4%,12.4歳)と有意な違いは認められなかったが,凍瘡の既往を有するSLE患者は,(1)冬期,凍瘡の出現する頻度が高い.(2)凍瘡の治癒に要する期間が長い.(3)凍瘡がびらん・潰瘍化しやすい.(4)冬期以外の季節にも凍瘡を生じやすいという傾向を示し,SLE群の凍瘡はコントロール群のものとは臨床像が異なり,より難治性で顕著な症状を示しやすいと考えられる.特にSLE群のうち(4)の傾向を示した患者はレイノー症状,chilblain LE,livedoの発症率が高く,末梢循環障害を生じやすいgroupと考えられる.また一般に女子は男子より凍瘡の既往を有する人の比率が明らかに高い(女子40.0%,男子13.1%)という結果も得られた.これらの結果から,凍瘡とLEの皮疹との間に何等かの関連性があることが示唆され,特に(1)~(4)のような特徴を有する凍瘡は,後年LEの皮疹に移行するという可能性も考えられる.

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© 1991 日本皮膚科学会
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