日本皮膚科学会雑誌
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難治性MRSA感染に対し3%酢酸ワセリン外用が有効と思われたVesicular pemphigoidの1例
二瓶 義道長谷川 隆哉佐藤 守弘
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1993 年 103 巻 1 号 p. 27-

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抄録

症例:80歳,男.1989年頃よりほぼ全身,特に四肢伸側に紅斑・小丘疹および小水庖が多発増悪した.組織学的に表皮下水庖で,蛍光抗体法では基底膜部にC3の線状および顆粒状の沈着をみた.血清中には抗基底膜抗体を認め,臨床像からvesicular pemphigoidと診断した.血清中M蛋白の存在と骨髄異型形質細胞の増加より多発性骨髄腫を合併していた.治療:ステロイド内服投与開始後,皮疹部からMRSAが検出された.それに対しイソジンゲルR外用を行ったところ接触過敏症を生じた.ステロイドと感受性のある抗生物質を投与して皮疹は改善傾向を認めたが,MRSAは皮疹部に常在化していた.MRSAに対して3%酢酸加親水ワセリンを外用したところやや有効で,瘙痒改善のため3%酢酸ワセリンにリンデロンDP軟膏Rを混合使用して菌は検出されなくなった.酢酸のMRSAに対する最小発育阻止濃度は2mg/ml(0.2%)で,酢酸ワセリンは広範な皮膚MRSA感染症例では有用な治療法と考えられた.

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© 1993 日本皮膚科学会
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