抄録
生後6ヵ月の乳児に,何ら誘因なく全身に丘疹が密生し,丘疹の組織像では類上皮細胞肉芽腫像を認め,全経過3ヵ月で皮疹はすべて自然消失した症例を報告した.免疫組織化学的検討では肉芽腫内の細胞はS-100蛋白陰性,肉芽腫の辺縁ではHLA-DRが発現しており,helper T細胞優位であった.電顕的検討では肉芽腫内には細胞質内に膜構造をもつ大小の高電子密度顆粒を有する類上皮細胞及び空胞状となった顆粒を有する類上皮細胞を認めた.類上皮細胞内にはBirbeck顆粒,脂肪滴は認められなかった.腺病性苔癬,組織球増殖症,汎発性環状肉芽腫,Blau症候群は否定できると考えた.自験例は現時点ではサルコイドーシスが最も可能性があるが,皮膚所見のみのため確定診断はできない.乳児サルコイドーシスは,皮膚症状で初発し,数ヵ月から数年の経過で眼,関節症状が出現してくる例が多く報告されている.我々の症例についても,今後,眼,関節症状等の発現について厳重に経過を観察すべきであると考えた.